true japan

Its Culture, Business, through a Japanese Marketer's Eye.

アドテクが衰退したわけではなく原点回帰するだけ

TechCrunchで盛り上がっていた話。

jp.techcrunch.com

別にアドテクノロジーが廃れるわけではなくて、これからも面白いものは出てくる。マーケティングテクノロジーの時代が到来するなんていう言葉に踊らされると、数年後にはマーケティングテクノロジーが死んだなんて話をする事になる。そろそろ言葉の遊びは止めないと、いつになってもマーケティングそのものが進化しないんじゃないかと懸念。

正しくは、やっと本質に回帰してテクノロジーを活かしたマーケティングをする時代がくるということだと思う。

この記事の冒頭は投資家目線の話が大きく、至極当然の話だが、ここ数年のアドテクノロジーの盛り上がりによって投資対象が従来型のエンタープライズ系のテクノロジーから、マーケティングツールとしてのアドテクノロジーになっていた。そして元々情報強者であった投資家達が情報弱者になっていて、Rocket FuelやMillenial Mediaのような株価下落による損失に巻き込まれているだけ。

アドテクノロジーと言っても根底にあるのはマーケティングそのものであって、それはグローバルのカンファレンスでは度々言われていること。

グーテンベルグの印刷革命の時代から電波メディアが出てきた時に、従来とは比較にならないマスへのマーケティングが可能になった。そして現代にはインターネットを介して、今までとは比較にならないマスに対して、よりセグメントされた情報を届けることが出来るようになっただけであり、マーケティングの本質は変わらない。

”メディアの近未来”でも書いた情報の流通が従来型のメディア(電波・プリント、メディアサイトを含めて)からソーシャルに移った様に伝えるべき情報は本質的に変わらない。同様にマーケターがするべき事も、本質的には変わらないものだ。

メディアの近未来

いよいよ劇的にメディアが変わってくるフェーズなのか。

従来型のメディアは、いずれCMS+QC(デスク機能による品質管理)+マイクロペイメント(執筆者への支払い)に集約されていくと考えているので、この動きは理にかなってくる。

 

mediadisruption.net

コンテンツの流通(販売)はメディア企業から切り離される。広告もすでにSSP(Supply Side Platform)やアドエクスチェンジを介して半分切り離されている。いずれはコンテンツの編集も切り離されるだろう。

もう10年も前になるけれど、当時やっていたメディア系サイトで企業から送られてくる新製品のリリースをCMS( Content Management System)に自動取り込み出来る仕組みを企画した。毎日数百通の封書(!)が届き、その中から編集アシストがピックアップしたものを若手がリライト。そしてデスクの目を通ったものが制作経由で雑誌やwebに掲載される。

この冗長な流れを:

  1. 会員登録されたメーカーの広報が、メディアのwebフォームに直接データで記入してDB化
  2. 編集部で締切に合わせて掲載日のタグを打つ
  3. 各編集部の制作担当がトンマナを合わせてリライト、CMSに投入

という流れで、メディア側の作業の簡素化を出来るのではないかと考えた。同じ仕組みは、雑誌記事とWeb記事のワンソースマルチユースにも有効なんだけど、コンテンツボリュームの制約が多いプリントメディア向けではないかもしれない。

実際は、大人の事情でこの仕組みは採用はされなかったけど、選別・入力・校正・承認・掲載という流れを簡素化することができる。

執筆・制作・販売(流通)を含めた次世代のエコシステムへ

この流れは、いままでメディア企業が謳歌してきた成功体験を否定するモデルになるもので、従来の編集・広告・販売による三極体制を破壊する。その中でも特に販売部門に対するインパクトは大きくて、反発は容易に想像可能。

従来は顧客対策のマーケティングよりも、純粋な販売部門として販売店対策・流通対策をやってきたメディアの販売部門。

従来の出版社の販売というのは、トーハンや日販といった流通に雑誌・書籍を納品した時点で売り上げを立てる。そして売れ残った在庫は一定の期間をおいて返本され差額を決済する。この制度を利用して、版元も一時的な売上をたてている事もあり、返本に合わせて新刊をを発行し、さらに売上を立てるといった自転車操業の繰り返し。販売価格についても再販価格維持制度によって全国どこでも同じ価格で販売される。

これが、実際にユーザーが購入するもののみが流通するようになり、返本は発生しない。実売上で勝負しなくていけない。

次世代の販売部門は、よりマーケティングオリエンテッド

コンテンツは有料であるべきという観点から従来の販売機能は必要だが、おそらくこれは旧来の流通会社+販売部門という関係ではなくなって、購読料金を決済する簡易的なモデルが中心になるか。そうなると販売部門は、よりマーケティグ部門としての顧客にリーチしていく施策が中心。

 ただし技術誌などのB2B系コンテンツはロングテールでの利用があり、発行してから10年20年と参照される記事の単発販売などは、版元の販売部門の機能となる筈。その部分はメディアプラットフォームであるFacebookなどではなくメディア本体がアーカイブを扱うというのが、妥当だろう。

やっと腹落ちしたPinterestの意義

先日、某レジストレーション系プラットフォーマーの人と話をした時に、Pinterestはどこに向かってるんだろかと話しになった。いまひとつビジネスモデルが見えなかったサービスだけどこの記事は分かりやすい。

gaiax-socialmedialab.jp

肌感的には分かってはいたけど、いまひとつすっきりしなかったことが腹落ちした。簡単に言えば”ソーシャルグラフ(=過去):インタレストグラフ(=未来)”ということなんだけど、他の記事とかみてもいまいちピンと来なかったのが事実。

パッと検索してみても、永江一石さんもECの観点から書いているように楽天電通との提携でECとの親和性の高いサービスとしてカタログ的な意味合いと先入観があった。The Content Marketingとかでも書いてはいるけど、ひまひとつ核心に迫った説明がない。

ユーザーにとってのメリット(?)や使い方は書いてあるが、マーケターにとっての観点が見えていなかった。

冒頭の記事から、要するにPinterest”ユーザーの潜在的欲求を集約するビジュアルブックマーク”と言うのが一番しっくりくる。これを利用して、純粋にユーザーの趣味・嗜好に合わせたコンテンツや広告を配信していけばいいということ。

Amazonのレコメンデーションに出来ないこと

過去の履歴から個人の行動を分析して未来に何が起きるのかを予想しているのがレコメンデーションだと思うけど、Amazonのリコメンデーションでも本当に過去の行動から未来のニーズを予測できるのかは意見が別れるところ。

ユーザーの実際の行動(顕在化した欲求って必ずしも個人の趣味・嗜好を反映するわけではなくて偶然や必然によって決まるもの。たまたま子供に聞かれて検索した玩具の情報というのは本人の恒常的な嗜好ではなくて、未来においても過去の行動を基にした記事や広告が配信されても意味はない。

それに対して、Pinterestのアプローチのように純粋に趣味・嗜好を収集していけば個人の未来に起こす行動・ニーズは汲み取りやすい。

ここでひとつの疑問が解けたのだけど、Pinterestでシェアされている写真というのが、あまりにもクオリティが高過ぎて一般的なユーザーは投稿しにくい。したがってユーザーが提供するのは”行ってみたい”、”買いたい”、”憧れ”といった未達成の欲求情報。素人の撮影した写真という情報(過去の情報)は投稿されない。ここがInstagramとの大きな違いか。納得。

”過去の経験”と”未来の希望”を混ぜないためのハイクオリティ写真を中心としたコンテンツ構成になっているのがポイント。もちろん写真を趣味とするユーザーが画像をアップロードすることもあるけど、それは他ユーザーの潜在的欲求を集約するためのコンテンツとして有用。

データ活用によって未来行動の予測をするために

今後のことを考えれば、日本法人の役割は国内ユーザーの利用(Pin)を促すためのコンテンツ開発とその趣味・嗜好を導き出すための新たなアルゴリズムの開発?

次のステップとして、現在は未来に想定される行動のきっかけとなる嗜好情報を収集しているが、ここにピンしてから実現までの時間軸となる情報が取り込まれると、さらにデータの精度が上がってくる。ユーザーは”希望を実現したのか?””どのくらいの時間がかかったのか?”が分かれば、どんな情報をリコメンドすれば良いのかが分かる。

タグの打ち方もかなりマニアックで刺さる。例えば”Harley Davidson”と検索した場合に、マニアであれば当然必要な情報となる車種やビンテージといった情報(”Vintage”、”Dyna”、”Road King”)がスクリーン上部に表示される。

 

マネタイズのモデルがどうなるのか?

ユーザーの未来行動予測エンジンとしてビッグデータの活用に利用できる可能性があるPinterestだが、同じような観点でユーザーのGeoデータを収集しているFoursquareの迷走にみるように、なかなかこの辺りのデータ活用がうまくいっていないのも事実。ユーザーサイドの説明が多く、マーケターへのメリットが露出していないという意味では分かりにくいサービスな点は共通している。

プロパガンダという名のマーケティング

安倍首相はプロパガンダの恰好の材料だった

歴史に名を刻んだ指導者の葬儀はプロパガンダのステージである。凄く残念な話だったけど、その後取り上げられもしないし、国会での野党からの追及も聞いてないし・・・。盛り上がってから書こうかと思って寝かしてあったが風化するまえに。

普段、国会中継で見慣れている国会議員の居眠り。日中の激務と毎晩の会食で疲れているのであろう。

動画を読み込み
 
 

しかし先日行われたシンガポールの父、リー・クアンユー元首相の葬儀。あれはマズイ。海外メディアにはうまく利用されてしまい、日本の信用はガタ落ち(まあその後の米国議会でのプレゼンで取り戻したかもしれないが)。どんな時代にも歴史に名を刻んだ指導者の葬儀には世界の注目が集まり、各国の民度を図ろうとするメディアがいる。

平成元年2月24日に新宿御苑で行われた大喪の礼。ここでも、CNNはバブル景気に浮かれる日本へのアンチキャンペーンを実施した。

海外放送局にバレバレのNHKのカメラワーク、それはプロパガンダのための絶好の材料であり、当時テレビを見ながら背筋が寒くなった。

普段なら平均的アメリカ人が絶対に興味を持たない日本の話。それでも太平洋戦争の主要因となったとされている昭和天皇の葬儀であれば、時間のある時にでもみておこうと。

動画を読み込み
 
 

 

そこでは、昭和天皇の霊前に向かう各国代表の弔問客の列。NHKのカメラには写っていない位置に天皇陛下の遺影があり、焼香に向かうであろう弔問客は、ある位置で一度立ち止まり、遺影に一礼をしてから焼香へ。

その場でのCNNのアンカーマンの解説。

  1. 韓国・中国の代表を紹介。他国の首相クラスと違い、次官級であることを強調
  2. 参列のある地点で、待機所があり、そこでは(カメラからは見えていない)陛下の遺影に向かって参列者がお辞儀をするのが習わしと紹介
  3. そしてカメラは、一礼をする弔問客を写す

ここで私自身も、”あれっ?”と思ったのは、韓国・中国代表の映像を見ていないこと。

すかさずCNNのアンカーマンは、”視聴者の皆さん、この映像は日本の国営放送に相当するNHKが提供しています。お気づきになったかもしれませんが、韓国・中国代表が天皇の遺影に一礼するタイミングでカメラは別の方向に振られていました。これは日本側が意図的に行ったものと思われます。”

これは完全に日本側の動きを読まれていたケース。おそらくNHKサイドとしては、韓国・中国代表が反日感情から礼をしないのではないか?という(不要な)配慮からカメラを外したと思われるが、これは外国の視聴者に伝わらない。むしろネガティブな印象しか与えない。

プロパガンダマーケティングの一手法なのだ

さらに、一般米国民の興味の対象とならないであろう主要国以外の参列者がカメラ前を通過する間は葬儀とは無関係の映像を差し込んでいきます。

  1. 真珠湾攻撃他、戦争のトピック
  2. バブルに盛り上がる街の風景
  3. マル優制度の説明

1.は定番の映像で、宣戦布告なしに攻撃を開始した日本の映像。これは多くのアメリカ人が過去に目にしている映像ではある。
2.は完全に日本がいかに舞い上がっているかを喧伝するための映像素材。時はバブル景気真っ只中、ホテルでの豪華結婚式に金箔張りのケーキ、成田空港でボージョレ―を開ける若者、タクシーを止めるのに札びらを切るやつなど、いかに日本人が拝金主義の嫌な奴らかに見せる演出。
ロックフェラーセンターを代表とする不動産や映画会社の買収などは、普段から見聞きしている話ではあるが、日本国内の好景気映像はアメリカ人の反日感情を煽るには最高の材料。
3. これは当時あった個人の預貯金を350万円まで非課税にする制度だけど、かなり刺激的な内容。

ビデオのイントロは、車の通行が全くない横断歩道を信号が変わるまで誰も渡らない日本人の足元から始まる。一般的に日本人は規則を守ると言われていることを強調。そこから市中銀行で口座をつくるCNNのレポーター。無事に銀行を出てくると、”ハンコ”を見せて、これがあれば公式な身分証明なしに口座が作れることを紹介。こうやって、多くの日本人は他人名義の口座を作って無限にマル優枠を増やしているという内容。

CNNのレポーターは、日本人は親戚や友人の名前でマル優制度を利用して脱税をするのが普通であり、金融機関もそれを容認しているという内容。

当時、世界に幅を利かせる日本叩きには絶好の場所であった。

発電コストの資料を読み解くと・・・

テレビや新聞・雑誌に加えて、Webに氾濫する様々なニュースに振り回され、根拠の無いBuzz系のへの脊椎反応とかをする前に、ちょっとロジカルに数字をみてみた。

4月27日に公表された経産省の発電コストについてデータの読み方。

発電コスト、最安は原子力…経産省が試算示す

いまさら誰も信じないかもしれないが、原子力の発電コストが一番安いとのこと(w)なので、ちょっと調べてみる。

グラフをみると、それなりに根拠がありそうなので、元ネタであるエネルギー庁の資料を見てみると・・・

総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 長期エネルギー需給見通し小委員会 発電コスト検証ワーキンググループ(第6回 平成27年4月27日(月)

当日の配布資料がダウンロードできるが、これの37ページ辺りから火力発電のコスト試算の説明がある。

疑問なのは、pp41-42の燃料費の考え方にあるLNG原油の燃料価格。為替が円安に進んでいる事実は考慮しているが、そもそもドルベースの燃料価格の平均値が昨年末来の原油価格を反映しきれていない。2014年時点の想定をするのであれば問題ないが、2030年までの推定をするのであれば1バレルあたり100ドル超の金額をベースに推定をするのは根拠としては弱い。今後の中東情勢を見てイランからの原油が市場に流れ込む事を考慮すると原油価格が大幅に上がる事は考えにくい。意図的に化石燃料の価格を高く見積もっているようにも取れる。これは原発推進には好都合の材料か。

ここで気になるのは、本当に原発の発電コストがそんなに安いのか?

この部分になると経産省の資料を読み込んでも、素人にはよく分からない。かと言って感覚的に断定をしてしまうと公平性に問題があるので、他に発表されている分かりやすいデータと照らし合わせてみる。

2012年の米DOE(エネルギー省)の発表によると、1000kw当たりの発電コストが、天然ガス63.1ドル、石炭94.8ドル、原子力113.9ドルとなっており、2035年までに建設される新規の発電所の3分の2は天然ガスとなる。

当然、経産省の試算方法にはCO2対策費用や運転費用が含まれているので、単純にDOEのデータとは比較は出来ないが、原発の運用コストは天然ガスより高く、中長期的に見て経済性が成り立たない。これを米国の天然ガス推進の思惑と取る事もできるが、実際にロシア他にも天然ガスもあるので、これはグローバルマーケットの総意とも取れる。

もうひとつの天然ガス資源が試算から漏れている事実

経産省としても2016年以降に始まる(筈?)の世界各地からのLNG出荷や、原油価格と連動したLNGの価格設定(=下落傾向)を加味しての試算であろうとは思うが、そもそも高コストであるLNGだけが発電燃料となる訳ではなくて、液化されていない天然ガスをパイプラインで利用シェールガスに代わる日本の切り札:JBPress)するという選択肢もあるわけで、仮にサハリンからのパイプラインが実現した場合はには、このコスト低減効果というものは2030年の試算に加味されるべきでは?

日本の発電の9割を支えているのは火力であり、その4割がLNGLNG天然ガスの流通総量の10%であり天然ガスの大半は液化されずに生ガスの状態でパイプラインによって流通されている。島国である日本が海外からパイプラインを引いてくる事は簡単ではないが、1990年代より開発が始まり2009年からLNGの出荷をしているサハリンからであれば極めて実現性が高い。ガス田と需要地の距離が4000km以内であれば、パイプラインの方がLNGよりコスト的に有利(液化設備等の投資のため)と言われているので、サハリンから首都圏の1400kmと考えると実に合理的。

リスクとメリット

エネルギーの安全保障に欠かせない地政学的リスクのアセスメント。まず考えられるのは、ウクライナ問題のようにパイプラインを政治的な交渉材料に使われるリスクは少ないらしい。パイプラインで結ばれた国家というのは運命共同体となり、簡単にお互いを裏切ることはできない相互の協力関係が生まれる。ウクライナ問題については単純にガス代金の未払いである側面が大きいので、現在のような政治的な局面に発展したのは東西の代理戦争とも言われている。

逆にメリットとしては、中東へのエネルギー依存からの脱却による地政学リスクヘッジ。イギリスでも一貫して供給地の分散を行い、地政学的なリスクをヘッジしてきた。これによって現在のイギリスの地位は築かれた

政治的な理由もあり、開発に時間が掛かっている案件ではあるが、サハリンからのパイプラインによる天然ガスの輸入が可能となれば北米・中東からのLNGへの依存度が下がり、地政学リスクのヘッジとともに、ジャパンプレミアムと言われる価格への交渉力が発揮できるはず。

参考リンク:

toyokeizai.net

newsphere.jp