true japan

Its Culture, Business, through a Japanese Marketer's Eye.

カルチャーの醸成もマーケティングの役割

Lawrenceの小川さんが書いていた Wheels & Wavesの話は面白い。モーターサイクル版SXSWとは、言いえて妙。

鶏玉子的な話になるけど”カルチャーがあるから人が集まる”のか”人が集まるからカルチャーが出来る”のか? 価値観(ユーザーエクスペリエンス)を提供しないと、人はインスパイアされない。インスパイアされない人はマーケットを形成しない。 日本のモーターカルチャーは衰退するばかり。モータースポーツを含めた趣味の分野も伸ばしていかないといずれは自動車・オートバイ市場が消えてしまう。

 

 

 

日本にはなかなか根付かないモーターカルチャー。若者の免許取得率が低下しているとすれば自動車の販売台数も先は見えている。

1980年には年間237万台を売り上げた国内バイク市場も 2014年には41万6723台 となり、2013年の新車購買者の平均年齢が51歳と燦々たる状況。 

” 都会に住んでいれば車なんていらないよね~ ”というのも事実で、日本の人口の50%超が三大都市圏に住んでいることを考えれば、みんな車やバイクなんて買わないわけだ。でも、それはNeedsレベルの話であって、人間の欲求としてのWantsとは別の話。その昔、あれだけスーパーカーだって盛り上がったんだから、日本にモーターカルチャーが根付かないとは言い切れない。

 

欧米には消費者のWantsを盛り上げるコンテンツが盛りだくさん

Pittsburgh Vintage Grand Prix

ペンシルバニア州ピッツバーグで1983年から続くビンテージカーイベント。

 

別に全米を代表する都市でも何でもない街、 2010年の国勢調査で人口30万人程度で全米59位。豊島区よりちょっと多い程度(2005年に29.8万人) 。この規模の町で、こんなイベントを毎年普通にやっている。

イベントとしては、町の中にあるSchenley Park(イメージ的には代々木公園の距離感)に2,000台を超えるショーカー、150台のビンテージレーサーを集めての10日間イベント。年代クラス別にレースを開催して、実際に現場で見ていると、すごく白熱してる。母校であるピッツバーグ大学からも近いので、散歩がてら観戦が可能。こんな規模のイベントが30万人都市から徒歩圏内で開催されていること自体がカルチャー。

日本でも La Festa Mille Miglia とかやってるけど、これって極々一部の人達が大きな投資をしてやっているイベントであって、日本でこれに関われる人というのは極一部で決してカルチャーの醸成には貢献していない感あり。 

 

SANREMO RALLY STORICO

イタリアサンレモラリーのおそらくエキジビションだと思われるが、おそろしくクラッシックなワークスマシンがまじめに走っていて、街のお祭りとしても凄く魅力的。80年代のラリーマシンどころか70年代に活躍したランチャストラトスルノーA110アルピーヌまでをまじめに走らせてる。これは、そんな趣味の世界を支える産業が発達しているからこそ可能。 

 

日本のモーターカルチャーを阻害するもの

日本でのモーターカルチャーが根付きにくい要因は数々あると思うけど、ひとつには環境(人口密度や気候)が、モーターカルチャーの醸成を阻んでいる。人口の密集を考えると開催場所の確保や安全管理の問題はあるし、また日本の高温多湿の気候は工業製品のライフスパンを縮めてしまう。

そして最近話題になっている旧型車両の増税問題。2015年には車齢13年オーバーの車輛への増税となる見通し。

”コモディティvsブランド”でも書いたように、日本の工業製品って決して性能を詰め詰めで作っている訳ではないけど、そこそこの性能を長持ちさせるという意味では秀逸。

ましてや欧米と比べれば圧倒的に走行距離を重ねないと考えると、13年たっても下手な外車の5年目車輛よりも消耗はしていない(実体験ですね)。2012年に5年落ちで購入したアウディ、この3年で故障したのは日本車では考えられないスイッチ類やセンサー類ばかり。過去に何台も国産車は乗ったけど、すべて初体験のトラブルばかり。まあ好きで乗っているので仕方ないが、日本車の(コモディティとしての)クオリティは秀逸だな。

単に車齢で13年間で増税の対象というのは、古くなったものを排除して新しいものを買わせようという、いまだに能天気なバブル発想なんではないかと。

古いデータとはなるが、国交省年間平均走行距離は1万キロ前後で減少傾向にある。

乗り遅れたWWDCネタ

ワクワク感がなくなったかな、WWDCも。新しいサービスを生み出すというよりは、人が考えたサービスを自分のプラット―フォーム(OS)に取り込んでいる感あり。元々、iOSに載っていたアプリってアイデアを真似されちゃう(ボイスレコーダー系なんかも典型だっけ)。

 

今日の発表でアップルが潰しにかかったモノ #WWDC2015

至極当たり前な動きで、Appleがニュースアプリをやる事は驚きには値しないのだけど、一つ驚いたのはメディア独自の広告配信も含まれていて、それに関してはメディアからマージンを抜かないという事。

weekly.ascii.jp

これは、既存のニュースキュレーション系には痛い話かもしれない。

とは言え、結局ユーザーがメリットを享受するためには、プラットフォームはキャリアやOSからニュートラルな立場でないといけないのは事実。私自身Apple製品から離れられない環境を作っているけど、Apple製品の優位性が未来永劫続く保証はないわけなので、キャリアプラットフォーム(?)に乗っかってくるサービスは、いつか(乗換の)苦労をする

ここに来て、Appleが既存、それも業態として成立しかけているサービスを取り込んで行って成立するのだろうか?

そもそもitunesが他のサービスより強かったのは、ezwebi-modeに縛られた世界を、上のレイヤーからサービスを提供していてキャリア変更してもサービスを使い続けられるようにしたという事。日本のキャリアは、課金部分での強みがあったけど、サービスのキャリア横断的なことをやられてしまうと、これは敵わない。

そんな訳で、音楽系、クラウドストレージ系、マップ系なんかは、必ずしもAppleに独占されてしまう訳ではないのかなぁと楽観的な予想。

過去にもAppleのような形でマーケットのシェアを大きくとった企業もあったし、そして彼らの独占がここまで崩れるなんて、誰が思ったか?

IEのシェア(7割超?)、PC98のシェア(国内のPCの8割)、ガラケーのシェア(そもそも100%w)

どこかでパラダイムシフトは起こる。それがいつなのかだけが問題。

普段使いをブランド価値にしたHarley Davidson

縁があって最近ハーレーに試乗する機会が何度かあった。まあ試乗ばっかりで、しっかりと走りこんではいないけどハーレーについて感じた事。

ハーレーは普段使いのハイエンドコモディティ、そしてドゥカティ/KTMはスポーツ用品(ブランド)

シリコンバレーに駐在中に使っていた社用車がサンダーバードのV8の4リッターだったけど、日本車やヨーロッパ車とは違ったユルさ。あの広大な大地を何時間も走る事を考えると、ユルユルで大トルクなのが良い。足回りも柔らかめで車線変更なんかもユッサユッサと動く。BMWメルセデスも人気はあるけど、あのくらいカッチリした動きをされると、フリーウェイを何時間も走るのは辛い。もちろんワインディングを責めるの間違いなく楽しい。あの広大なフィールドではアメ車は面白い。

週末に休みを取って、秋田の山に行った。高速で一気に岩手までいってそこから下道。アケアケで行くと気持ちがいい。下道でちょっと林道に入ると楽しい。見通しのいい所では、目一杯楽しめる。

だけどちょっと感じ始めた事。体力の低下と共にアケアケで攻める前に体力が続かない。正直目的地までの道のりは退屈だ。下手な国産車よりいいが、でも一定のスピードで走り続ける事に一切の喜びはない。最近ちょっと辛い。

ふと考えた。これを楽しいエクスペリエンスに出来ないのか?(多分そうしたら、目的地についてからの経験が凡庸なものになるのだが)

多分、そこがハーレーのエンジニアが考えている事なんじゃないか?ゆっくり流してもエンジンの存在が分かる。音とバイブレーション。この味を作る事に注力してるんだなと。何がすごいと言えば、普通に走ることを面白くしてしまうこと。エンジンが回っているだけで楽しい。もちろん、そこそこのペースでいくのも余裕がある。ほぼほぼ車のエンジンと同じキャパのエンジン。開ければ速い。

そりゃあ、スポーツライディングを楽しもうと思えばハーレーよりいいものはいくらでもある。だけど、そんな瞬間は人生で限られてる。だから最高のエクスペリエンスをコモディティとして(=いつでも)提供するガジェットを作った。それがハーレーなんじゃないか?

ドカもKTMも楽しいのだけど、それはスポーツ用品な訳で、それを普段使いとしてやるには、何かを犠牲にするわけ。

ちょっと休みを取って岩手の方に出かけた。KTMってダカールラリーで有名だけど、あの巨体でオフロードを真面目に攻めていけるのが楽しい。

motorcycle news: new bikes

おそらく ドゥカティ も、その瞬間を迎えた時は楽しいんだと思う。でもそれって、スポーツ用品として限られた条件を求めた時の面白さであって、いつでもコモディティのように体験できる事ではない。

KTMは楽しい。だけどそれはアケアケや攻め攻めの面白さであって、スポーツ用品(安っぽい表現だが)としては、ここを使わないと面白くない。おそらくドゥカティは(試乗しかしてないけど)、ワインディングとかで走ったら凄く楽しい。KTMは(アドベンチャーの場合)オフで走ると凄く楽しい。あの巨躯がいわゆるオフ車として動くのは素晴らしい。

動かすだけで楽しいコモディティブランド

回るだけで楽しいエンジンって凄い。古いハーレーだと3拍子といって、止まるか止まらないかギリギリの所でアイドリングさせてるユーザーも多い。あれだけで楽しい。

週末は風が強かったせいもあるけど、高速を100キロくらいで巡航していると風切り音しか聞こえない。そこから加速していけば、元気のよいKTMサウンドが聴けるんだけど、やはり強風。

おそらくハーレーの場合って、その速度域・回転域でもエンジンの存在感が強いんだろうな。

欲しいw

おまけ

 

 

コモディティvs ブランド

たまにヨーロッパの二輪車を販売するディーラーの人と話をする機会があり、四輪/二輪の話を聞くことがある。日本の製造業で今でもグローバルマーケットで頑張っているのが自動車/オートバイの分野と思うけど、ブランディングという目線だと弱いのかと。

ブランドマーケティング/コモディティマーケティング

日本の四輪/二輪製造メーカーの得意分野はミッドレンジからローレンジで、コモディティとしての自動車は日本メーカーの最も強いところ。トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル等々が好例。

同時にレクサスやインフィニティという高級ブランドがブランドマーケティングのアプローチで展開しているけど、ユーザーがそれらに求めているのは実はコモディティ的な信頼性であって、メルセデスBMWに求めるブランド価値とは違う部分であることも事実。

二輪車になると、ヤマハ、ホンダ、川崎、スズキが世界のマーケットを席巻している事は間違い無いのだが、実は(ユーザーのライフスタイルまで巻き込んだ)ブランドとしてはハーレー、BMWドゥカティといった欧米のメーカーに敵わない。

プロダクトとしてはミッドレンジからハイレンジの工業製品としての能力はありながらも、ブランドとしての確立に弱い。そしてさらにその上のハイエンド(ブランド)については、欧米企業の得意とするところ。

だいぶ前に「仮にクラウンをBMWと同じ精度で組み立てたら、値段あまり変わらなくなる」って知り合いの開発者も言ってたし、ポルシェなんかだと普段の整備をする工場でも温度管理をしていて、エンジンの組み立てなんかも金属の膨張を加味して一定の温度で行うとか。

二輪も四輪も日本の工業技術って大量生産に寄っていて、それもかなりのボリュームそこそこの性能絶対的な信頼性で生産しているように見える。この3つを同時に実現するのは凄い事で、この信頼性をこのボリュームで作るというのは日本メーカーの強み。もちろん、ここ一番というところでは最高の品質(性能)を出してくるのも事実。

その一事象として、二輪の世界選手権であるMoto GPなんかもかなりの確率で上位を占めている。それなのに、ドカティやハーレー、BMWといったブランドやカルチャーを作ることはできていない。

最近のドゥカティのビデオ。従来はレースを中心としたニッチなイメージで、本当にバイクが好きでないと手を出せないモノだったけど、今度の製品ラインはよりカジュアルなカルチャー路線のクリエイティブを提供している。ライフスタイルの中に溶け込んだドゥカティライフを演出してる。5月にはドゥカティ スクランブラー 原宿をオープンして、アパレルの切り口からのマーケティング展開をしてる。

 

そして米国を代表するブランドであるハーレー・ダビッドソンは、ライフスタイルとしてのブランドを確立しており、世界中で安定した人気を保っている。

日本国内でも毎年4000台近くは新車登録されており、販売価格を考えると、よくもこれだけの台数が捌けるもんだ。

車両そのものだけでなく、アパレルやライフスタイルまで非常に影響力の大きいブランドなんだけど、正直なところ機械としては前時代的な構成で、精度もそこそこ。それでも実際に乗った時の感覚は、他のメーカーには無い特別なもの。走ってるだけで楽しいという感覚はハーレー独特。ドゥカティは正直、真面目に走る(操作する)ことが前提なので、ただ街中を走るなんてのは辛い

ハーレーダビッドソンが他のメーカーに勝っているのは、その圧倒的なユーザーインターフェース(UI)ユーザーエクスペリエンス(UX)なのかな。

BMWも同様で、ハーレーよりは走りに振ったユーザーが多いけど、独特の世界観を提供していることは間違いない。

ブランド作りが上手いヨーロッパは、カルチャー的にもアマチュアスポーツとして四輪/二輪遊びが確立されていてクラブチームも多い。そういったクラブがパトロンとなってモータースポーツの底辺を支えている。

Hondaが勝てない理由はマシンの性能差ではなくて、ヨーロッパに根付くパトロン文化の差が大きい。

特にヨーロッパだとクラブチームが数多くあって、そのパトロンが活動を支えている。同じ意味で、4輪の最高峰であるFormula1もヨーロッパ勢が強いのはこの辺かもしれない。

 

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NHTの正体、そしてレポート地獄

NHT (Non Human Traffic) ,それはレポート地獄との戦いの始まり

IMJの江端さんがアドタイで書いていたNHT(Non Human Traffic)が話題になっていたので、忘れないうちにメモ。

スマホ、動画へシフトする、広告を巣食うNHT問題とは

詳しくは江端さんが書いていますが、こちらは実際にメディアを運営していて見てきた事例をいくつか。そもそも、なぜNHTがこんなに多かったのか?

NHTがメディアに与えるインパクトは大きくて、特に広告のクリックログとかは大打撃を受けます。仮にレポート制作者が異常なレポートを見つけるとそこからは私の仕事。同時期に複数の広告キャンペーンが走る中で一本のキャンペーンのログレポートを精査するだけでも;

  • 100万インプレッションで想定1%=本来なら1万クリック程度
  • 実際のレポートでみると、10万クリックくらいになっててCTRが10%。
  • これを精査するためには、生ログ10万行を名寄せして怪しいIPからのクリックを削除する手作業。ロボット多過ぎ。

いまどきWebサーバーや広告サーバーの生ログを見る人もいないとは思うが、当時でレポート一本の精査に2~3時間は普通。そんなものが10本もあると生産性は確実に落ちます。

そもそものNHTの目的とは?

1)クリック課金の予算を獲得するため

江端さんも書いているように、元々はクリック課金型の広告サービスが出てきた頃に、意図的にディスプレイ―広告をクリックして広告の予算を消化させて利益を得るモデル。(怪しい)媒体社が自ら顧客のバナーをクリックしまくる。ただしこれだと、あまりにあからさま(クリックログを見れば社内のIPアドレスであることが丸見え)なので、中国とかのアウトソース先でクリックをさせたケースもあります。

2) 企業がメディアの全ページをクロールして全てのリンクをクリック

これがかなり悪質で、メディア企業を悩ませた。文面通り記事のリンクだろうが広告のリンク(=クリック)だろうが、すべてをたたいていく。その結果として(特に)広告のクリックレポートが被害大。

(ちなみにDoubleClickのアドサーバーは頭良くて怪しいクリックをリンク先に送っていないらしくて、異常クリック分のトラフィックは広告主に発生していない)

目的としては;

  • 表向き:企業に対するネガティブ情報が流れていないかを監視するWebパトロールサービスとして月15万円程度で販売。企業の広報やマーケターにとっては便利なツール。
  • 実態:メディアの記事を勝手にスクラップして再編集してユーザー企業に有料提供。正直なところ、昨今のダメキュレーションサイトより遥かに性質が悪いです。

経験から言うと、とある韓国のIPから5~10分置きにクローラーが来て、クリック出来るものはすべてクリックします。サイバーパトロールという意味では、頻繁にクロールして情報を集める必要があると思うのですが、実は彼らもブロックされる可能性を考えて、100個以上の異なるIP(すべて所有者は同じ)からクロールしてきます。某一部上場企業なんかも、自社関連のニュースだけをキュレーションしてもらい、社内のIPからはそれしか見れなくしていた。

 

以下は悪意はないけど、結構コンテンツのログも広告のログもおかしくなるので結構困る。

3)個人からのアクセス

常時接続が普及したころ、巡回ソフトを利用した個人からのトラフィックも増加。一定の時間内に同じIPから何回もアクセスしてくるし、ユーザーエージェントからそれがブラウザじゃなくて、ソフトウェアであることは分かる。これは悪意もなく、ただ情報を集めるために個人ユーザーがサイトをクロールしまくるもの。懸賞サイトとかニュースを収集するためらしい。

4) 企業や大学の研究所からのアクセス

結構多くて、一企業や大学の研究所からのトラフィックが多い。同じIPから1時間に数回、全ページをクロールしていく。

この辺は相手先が特定しやすいので同僚が確認したところ;

  1. 会社として自由にインターネットの利用が許されていない
  2. しかし、自社や競合製品の情報は収集しなくてはいけない
  3. 自らクローラーを開発して記事を収集し、関連情報だけを表示するWebサイトを構築して社内向けに公開(??)

結局、これも無断転載なので止めてもらうようにします。実は当時、企業内のインターネット利用規制を考慮したサービス(関連記事クリッピング的な)も販売していたので、そちらを利用してもらえないかと交渉。

以上、実際にメディアであったクリックレポート地獄の話。