true japan

Its Culture, Business, through a Japanese Marketer's Eye.

モーターサイクル業界の行方

以前のエントリーから考えたこと:

ブランドマネージメントが不在の日本の二輪メーカー

二輪メーカーはどこに向かうのか?5年後10年後のモーターサイクルカルチャーはどうなっているのだろうか?

海外メーカーに目を向けると:

ハーレーダビッドソン(1903~):

世界景気に左右されながらも、グローバルでは拡大を続けている。決して最新鋭の技術ではないけど、常に憧れの対象として二輪業界のトップ。いまだ50年以上前の車体が一般的に使われるという特殊なユーザー動向に支えられてブランドの維持は盤石。強みはあえてテクノロジー的には枯れたものを使っていること?空冷(一部を除く)VツインのOHVなんて言うのは50年以上前の技術ではあるが、それが生み出すアナログ感がユーザーの心を離さない。最近のモデルは、80年代以前のモデルと比べると明らかにデジタルチックな動きをするが、それでも日欧の先端メーカーとは程遠い味がある。

今後、アジアやアフリカの経済成長を続ける市場においても、まずは憧れの対象としてユーザーを獲得できるのではないか?

BMW(1916 ~):

世界を代表する自動車メーカーの二輪車部門という立ち位置から圧倒的な開発力を持ちマルチシリンダーエンジンも発売しているが、自社のアイデンティティーとして1920年代に発売されたフラットツインを進化させ続けている。中排気量クラスの開発に加え、最近ではスクーターの拡販も行っている。

カッチリとした作りと動きは、いかにもゲルマンであり日本人の感覚にもあうのだけど、最近は余りにも多くの電子デバイスが導入されていて、ユーザーが触る余地がない。

トップラインの商品については、リピーターのリテンションであり、シェアの拡大にはエントリー層の獲得を進める必要がある。中排気量車種の拡販に加えて、スクーターラインのビジネス需要をハイエンドのコモディティーとして、どの程度のシェアを広げられるか?がキー。

ドゥカティ(1926~):

世界選手権ではトップクラスのブランドであるが、基本的にはイタリアの少量生産メーカーであり続けるのではないか?

従来のスーパースポーツからカジュアルなスクランブラーに加え、競合メーカの買収売却を繰り返して知見を積んでいるとは思うが、新たな商品ラインは見えてきていない。

トライアンフ(1887~):

イギリスのメーカーとして、古くからのスタイルを守りつつ新しいプラットフォームを導入。ハーレーと同様に古い車体も現役で稼働しており根強いファン層を抱えているが、中型以外の車種の補完はない。

KTM(1934~):

オフロードの世界ではダカールラリーでは15連覇中。元々オフロード中心のメーカーであり、国内外のエンデューロでもユーザーシェアは高い。市販車であっても、選手権で使用されるコンポーネントと共通する部品が多く、品質的には現状世界トップレベル。

最後発のメーカーではあるが、昨今は大排気量のロードモデルに加えて、Dukeなど小型二輪クラスでシェアを伸ばしており、業務用を除く分野では今後の伸びが期待できるメーカー。

さて、そんな海外メーカーと戦う日本メーカーは?

おそらく、レース業界(オン・オフ)で世界には名前を残すだろう。そしてそのブランディングが生む販売シェアも。

ドメスティックのマーケットに目を向ければ、業務用の分野においてはHY連合により引き続きシェアを獲得するとは思われるが、小型・中型においては競合できるプロダクトが見えない。

大型においては、グローバルプラットフォームたるプロダクトは順調であると思うが、それらは直接海外メーカーとの競合関係となるので、ブランディングが大事。

さあ、ブランド守れるのだろうか?そこが正念場。

ブランドマネージメント不在の日本の二輪メーカー

ホンダとヤマハ発が自動二輪事業で協業検討を発表、18年の販売開始めざす

業界的には画期的な話で、かつでHY戦争と言われるくらいに競ってきた2社が協業するのは、二輪業界の発展のためと歓迎する向きもある。

 

差別化のしにくい業務用バイクの世界で日本を代表する2社が共通プラットフォームを使っていくのはビジネス的には理にかなっている。

かつてはホンダのスーパーカブヤマハのメイトが業務用原付の代表。シェアとしては圧倒的にホンダのカブの方が多かった訳だけど、2ストのメイトも面白かった。高校生の頃は自分でカブのエンジンを分解して色々と基礎を勉強したもんだ。

さて、その上位にある小型・中型二輪に目を向けて見るとどうだろう?

最近(というかもう10年くらい)日本のメーカーに感じているのは、20年以上前に台湾で見た日系(劣化)レプリカのバイクそのもの。いまでも台湾とかの東南アジアの国々では小型の二輪というのは生活者の重要な移動手段なわけだけど、当時の台湾では日本のレーサーレプリカのコピー品が現地メーカーで生産されていた。スタイルを見れば、世界に誇るプラスチック成型技術で最新のレーサーレプリカだったけど、中身といえば鉄フレームに空冷OHCのVツインの150cという旧態のプラットフォームに最新の皮を被せたもの。

そして同じ事が、現在の日本で起きている。

例えば、かつて車検不要な中型で売れ筋だった250ccクラスを見てみるとホンダの最新作はこちら

【新車】ホンダ、新型スポーツモデル「CBR250RR」を発表 2016年末にインドネシアで発売後、国内発売も!

確かにデザイン的にはカッコいい。でも中身を見てみると何の変哲もない直列2気筒のエンジン。別にマルチだから偉いって訳じゃないが、これってまったく20年前に台湾メーカーが作ってたものと同じアプローチじゃないか?ワクワク感が不在。

ちなみに80年代のホンダはどんなものを作っていたかというと;

Honda CBR250R 

1987年の発売されたものですら15000くらい回せるマルチだった訳で、なぜその30年後に発売される新型が何の変哲もないツインなのか?

同じような話は、ヤマハのFZ250PHAZERなんかは市販車で17000rpm近く回せるエンジンだったり、スズキはGSX-Rとか、同一(または近似)ブランドで30年前の方がイノベーティブだった事例に事欠かない。それらのプロダクトが30年たったいま、残っているのはブランド名だけであり、実際のプロダクトが形成するマーケットが存在しない。

各社同じようなブランドネームで今も新型を出しているけど、ほぼ皆んな劣化レプリカ。ブランドマネージメントの観点から見ると、過去に積み上げてきたブランドネームを劣化した新型に使うべきではない。

正直なところ、日本のメーカーはもう小型・中型の二輪を作る体力も気力もないのではないか?大型であればグローバル市場を視野に入れた開発もできるが、国内市場向けの製品は業務用くらいしか開発の余地はないのだろう。

時代が変わりもちろん、日本ではハイスペックな商品なんて求められないのかもしれない。でも今までに蓄積・醸成されたブランドは守るべき。

個人ブログがメディアにならない理由

いきなりステーキのファンであろうジェネストリーム秋貞氏の愛に溢れたはてぶろエントリーが面白い。このエントリーを例に 個人ブログ(CGM)がメディアになるか?と考えてみた。(多分書いている本人はメディアとは思っていないだろうけど、これを見てメディアと言う人が多いので敢えて取り上げてみた)

ゴールドメンバー向けの黒ウーロンサービス廃止の発表からその撤回まで、ソーシャルの影響力なのか?それとも暴力なのか?

genestream-ceo.hatenablog.com

まあ単純に原価の高騰を理由にサービス内容を変えるということで、仕入れ的に見たら極当たり前の経営判断だとは思うけど、これに対する反応が面白い。

” いきなりステーキがマクドナルドになる7つの理由 ”として、問題点を検証している。一見、理にかなった分析と検証に見えるけど、実はこれって根拠に乏しい憶測であって、別にサンプルをとって調査した訳でもないし、ペッパーステーキに裏取りした訳でもない。

ただ分かることは、憶測であっても個人が公に発言することが出来るので、企業側はそれなりの対応を求めれらることにはなる。

個人ブログがメディアになり得ない理由

いくらでも理由は考え付くけど、今回の場合は下記の2点。まあ秋貞氏もメディアと考えてはいないと思うけど、もしこれが定義上のメディアだった場合の課題は:

1. 個人は裏取りをしない(出来ない)

ソフトドリンクのメニューから黒ウーロン茶だけなくなるのが納得いかない。

「 いやいや、原価率違うんならそもそも価格設定がおかしいでしょ。 」と言ってますが、そもそも仕入れ先が違う商品なので、仕切値次第の問題。なのでおかしな部分は特にないでしょう。

また、多くの会員の目的が黒ウーロン茶のように書いてますが、それも個人的な意見。(まあ私自身も黒ウーロン茶派なのは間違いないが。)

2. 好き過ぎると相手の事情が見えなくなる

今回はいきなりステーキが好き過ぎで感情が入っているので、冷静な判断ができていない。

自分が好きなものを第三者的に書くのは難しいです。

それでも、ブログの影響力は大きいのは事実

はてぶろのエントリーの影響があったかは定かではないが、いきなりステーキはすでにゴールドサービスから黒ウーロンを無くすことを撤回している

genestream-ceo.hatenablog.com

あらためて思うのは、秋貞氏の愛ですね。

日露首脳会談に期待すること:日本のエネルギー安全保障

日露首脳会談の最優先事項は領土か?エネルギーか?

現代ビジネス:

gendai.ismedia.jp

対ロシアの交渉で必ず最初に来るのが領土問題であることは間違いないと思うので日露首脳会談には期待をしたい。 基本的な人権保護のために、旧島民が北方四島へ戻れることは国家として重要な課題。それと同時に、現実の問題として非常に重要なのは日本のエネルギー安全保障。今国会で問題とされた安保法案問題にしても背景にはシーレーン防衛があると思うのが論理的で、これを無視できる程いまの日本は地政学的に安全なポジションにはいないと考えたほうが無難。

 

南シナ海における中国のリスクとロシアからの天然ガス供給

現に南シナ海における中国の埋め立ては 実質的な実効支配を中国にもたらす可能性もあり、そうなれば中東から運ばれてくる原油LNG(液化天然ガス)の航路の安全性は中国次第ということ。いわゆるシーレーン防衛の話。

このリスクをヘッジするためには勿論中国との対話も重要だが、それに加えてエネルギー供給源の多様化が最重要課題。そこでサハリンからの天然ガスのパイプラインの再開に向けての議論に期待をしたい。現在サハリンからLNGの形で輸送されている天然ガスをパイプラインで直接日本に引き込むということ。現在はLNGという高付加価値の商品を購入している訳で、これは非常に大規模な設備と投資を必要とする液化というプロセスが必須であり、さらにはLNGの形になった瞬間に、そのエネルギーがどこへ売られるか?本当に日本に入ってくるのか?というリスクも生まれる(実際には液化施設の開発から買い手の資本が入るので単純ではないが)。

元々、世界の天然ガス流通量の9割近くはパイプラインで輸送されているので、サハリンー関東圏までは約1300キロでありパイプライン設置は極めて現実的な話。

この取り組みが進めば、少なくとも南シナ海におけるシーレーン防衛問題は多少なりとも軽減される。

現在、原油価格が下落傾向にあり、パイプラインによる購入価格的メリットは少ないが、LNGスポット価格高騰時の$16/100万BTUであれば、北米から輸送されるLNGよりもサハリンからのパイプラインの方が25%安くなるという試算もある。原油の低価格も将来的に担保されている訳ではないので、エネルギー供給源の多様化という観点からもロシアとの協議をすすめるタイミングである。

ロシアはリスクヘッジ先として安全なのか?

ここで、リスクヘッジ先としてのロシアが信頼できるかとの懸念も出てくる。パイプラインによる天然ガスの輸入についても、パイプラインを止められたウクライナの事例を取り上げて”脅威”と捉える考え方もあるが、それは杞憂である確立も高い。

なぜなら 国家のGDPの25%をエネルギー輸出に頼るロシアは、顧客である国家に対して侵略的な行動には出られないから。ウクライナについては、元々の衛星国であった事、ガス料金の未払いが続いていた事、による特別対応である側面が大きい。

現在のロシアは、”脅威”ではなくて”可能性”と見る方が正しい。

経産省の藤和彦氏の著書「シェール革命の正体」では、パイプラインの生み出すエコシステムをこのように説明している。

ロシアのパイプライン政策
ロシアという国は、個々の地域が政治・経済の中心地から遠く離れて いる地理的特殊条件にあり、インフラの整備・発展こそがひとつの 統一国家に住むことの利点を保障する そしてパイプライン等の輸送システムを高度に発展させることにより、 ロシアの地理的特殊性を逆に競争力のある長所に転換できる。 

パイプライン

・初期投資は大きいが、操業の安定性、効率性、経済性で有利

・規模の経済性で、鉄道や電気と供に自然独占体を形成 

・ひとたび完成すると「正のフィードバック機能」を有する 

  →追加インフラの建設などによる経済波及 

パイプラインの相互確証抑制効果 

・パイプラインでつながれた国同士での破壊的な闘争が自制的に回避される 

・長距離パイプラインでつながれたBuyer-Sellerは、容易に取引先を変更できない運命共同体となる 

⇒反対にLNGには支配という要素も、協調という要素もない

 

相手が中国であれ誰であれ、要は現時点においての脅威であるか、可能性であるかを見極めることが重要。

将来的には中国とのパートナー関係は必然

南シナ海における中国の活動は明らかに”脅威”である。

ただし、これは現時点においての話。

いまはまだ海外からエネルギー資源を輸入する中国も、将来的にはエネルギーの輸出国になる。いまはまだまだ領土拡大の路線だが、その時には現在のような侵略的行動は控えて来ると想像(希望的観測)できる。ベトナム、フィリピン 他との緊張関係にあるベトナム・フィリピン他とも、がいずれこれらの国々が中国の顧客になった際には態度を変えてくる。

そして現時点で利益が相反するようにみえる日中関係も、シーレーン防衛という観点から見れば、ホルムズ海峡におけるエネルギー安全保障では協調できるはず。 

元々シーレーン防衛では大きな役割を務めた米国が国内資源およびFTA圏内のカナダ、メキシコ、そして南米まで含めると、中東へのエネルギー依存度が下がっており、いずれは米国のシーレーン防衛への貢献は減っていくと思われる。 そうなった時に、湾岸地域から多くの資源を輸入する中国と日本はお互いにシーレーン防衛に協力していく立場にならざるを得ない。

個人的に現政権に対してあまり期待はしていないが、この局面は日本のエネルギー安全保障にとっての大きなチャンス。 2017年のGastech Japanには、日本のエネルギー安全保障の未来が掛かっている。

Sociologyとマーケティング

 

ある大学教授が言っていた。ソシオロジー(社会学)は、ソーシャルサイエンス(社会科学)のなかでも残り物としての存在。経済学、文学、人類学など数値化や文書化しやすいものが社会科学の中から独立したドクトリンを築いていくなか、最後に残った人間の感情と行動と言う、半ば宗教的な価値観に基づく行動を学問として確立していった。

そこにある真理 はパッションとエモーションに基づいた行動そのもであり、  マーケティングに必要な要素が溢れている。マーケティングにロジックは必要。なぜならロジック無しでは、最初から最後まで感覚的なGuess Workになってしまうから。 

実際に世の中でビジネスとして確立されていながら数値化しにくいもの:

 ・ 金型の精度=今でも玄人の触感が大事

・レンズのクオリティ=特定条件の人の目視

・ブランド価値=????

マーケティングは奥が深い。