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なぜ日本にグローバルカンファレンスが根付かないのか?:会場の考察

日本で国際カンファレンスを運営してきて感じてきたこと。正直なところ新規のイベントを開催することは(特に海外事業者にとって)難しい。それは日本の風習的に根付いたものであり、単に会場を増やせば解決する問題ではない。どうすればもっと有効活用できのかを考えたい。

「展示会産業の拡大が 日本経済を復活させる!」(日本展示会協会)

東京ビッグサイト、展示面積25%増 五輪までに(日本経済新聞 2014/6/18)

いかにも国内の会場面積不足が国際カンファレス誘致が進まない主原因のように語る論調があるが、会場不足は原因のひとつであって本質はそこではない。仮に会場の面積を増やしたところで、おそらく既存の国内イベント主催者が利するだけであって、本来想定している海外のイベントオーガナイザーは日本の会場を選ばないかもしれない。

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1)予約の取りにくさ:過去の実績に基づくクローズドな取引

2〜3年先の問い合わせにも対応できないのが現状で、それも過去実績からの口約束ベースが優先される。それに対して(一般的に)海外の会場は契約書ベースの先約や規模が優先される。

日本の会場は小さなイベントであっても過去の取引があれば優先されてしまい、ホールがひとつ埋まっていれば、仮に全ホールを必要とするイベントがあっても簡単には会場を提供出来ない。これは最終的な稼働率には影響していると思われ、会場の総面積から見た場合の稼働率は下がっている筈。

日本展示会協会のページの下部にある各国の会場稼働率についてみると、日本が40〜65%。それに比べると展示会事業の成功事例であるドイツの場合は10%台前半。稼働率の計算方法に違いがある事を前提に計算をしてあるようではあるが、おそらく国内の大規模展示会場の稼働率をホール個別に算出した場合は、上記の統計値より低くなるのではないかと推測される。

サンフランシスコで最大規模のMoscone Centerの事例を見ても、絶対的に規模の大きいイベントが優先されるのは当たり前で、仮に毎年開催のイベントでも利用面積が小さければ開催時期をずらされてしまうのが当然。

会場の営業担当者から見た場合、単発の大規模イベントよりも小規模でも毎年開催してくれる(可能性の高い)リピーターの方を大事にしたいのは理解できる。しかし、(規模にもよるが)売上の大きい案件が優先されるというビジネスの基本が優先されなければ、いつになってもグローバルカンファレンスの誘致は不可能である。

 

2)設備・サービスの脆弱さ(英語対応、保税、図面手配)

実は海外のカンファレンス主催者が一番困るのが普段のコミュニケーションや手続き上の各種サービス問題。まず外国語対応(いわゆる英語)が最初から可能ではない。主催者からすれば、海外でのイベント開催にあたり、まずは会場にメールや電話で連絡を取るが、すぐにはコミュニケーションが取れないのが通例。契約書等の書類についても、英文の準備には時間もかかる。

また大規模な展示会になると、搬入する資材の保税も必要。モーターショーや産業系の展示会など、機材の価格が数百万から数千万に及ぶものを国内に持ち込む必要があり、会場が保税されていない限りは、出展社が自ら税金を納めなくてはならない。本来、一時的な持ち込みで輸入ではないので展示会場での移動においては免税が適用されなくては展示会のたびに納税が必要となる。

これを回避して、特定の区域内においての資材の持ち込みにおいては税金を免除するという措置(該当区域を保税とする)をとるのだが、保税の手続きは非常に煩雑なもので、分厚い書類の準備だけでも数ヶ月。そして申請にも数ヶ月かかる作業になる。世界の主要展示会場は、基本として通年で保税されており、展示会開催のたびに保税手続きをする必要がない。

また、展示会場利用のフロアプランなどは、海外の会場の場合、会場側がCAD図面を準備して、それに伴って主催者が施工業者への入札を行うが、日本の会場は図面を準備したりはしない。図面は主催者が先に施工業者を指定し、その業者が準備をすることとなる。

海外の主催者の場合、その会場での展示会開催が可能かどうかの判断をするために事前にフロアプランが必要となるのだが、その図面を提供する施工業者を開催決定前に指定する必要があり、これは全くもって順序が逆になっている。

 

3)面積:

実は面積の問題は、上記の2点から比べると国際カンファレンスの誘致には不利にならない可能性もある。

確かに国内の大型の展示会場を見回した場合、国際カンファレンスを開催する事のできる面積を持った会場は3ヶ所。上記のように会場の予約が取りにくいことは事実であるが、Singapore Expo(10万sqm)Sands Expo & Convention Centre(12万sqm)や韓国のKINTEX(10.8万sqm)といった主要会場と比べて、絶望的に会場面積が狭いわけではない。

東京ビッグサイト:

展示会場 80,660sqm、会議室が最大1,100名収容で大小22室。面積は国内一ではあるが、大きく2つのエリアに分かれた展示会場と、そこから距離のある会議場のレイアウトはグローバルカンファレンスの運営に不利かもしれない。


幕張メッセ:

展示会場 72,000sqm、会議室が最大1,600名収容で大小27室。都心から離れてはいるが、展示会場には柱がなく海外の主催者からも評価は高い。会議室の他にもイベントホールの利用で3,000人クラスのカンファレンス会場は可能。

インテックス大阪:

展示会場 70,000sqm、会議室が最大290名収容で大小23室。面積はメッセに近いものがあるが、展示会場は複数に分かれていて柱が存在。空調の増設を行ったため柱の周りに大きなダクトが設置され、これが会場の使い勝手を悪くしている。

以上の3会場を見た場合でも、アジアの他会場と比べて極端にクオリティーが落ちる訳ではない。Singapore Expoなどは、展示会場内の柱に加えてホール間の通路が非常に狭いなどの難点を抱えている。

以上、会場という側面のみからの考察。他にも、会場周辺の宿泊施設やMICEのこともあるので、次回以降に解説。