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発電コストの資料を読み解くと・・・

テレビや新聞・雑誌に加えて、Webに氾濫する様々なニュースに振り回され、根拠の無いBuzz系のへの脊椎反応とかをする前に、ちょっとロジカルに数字をみてみた。

4月27日に公表された経産省の発電コストについてデータの読み方。

発電コスト、最安は原子力…経産省が試算示す

いまさら誰も信じないかもしれないが、原子力の発電コストが一番安いとのこと(w)なので、ちょっと調べてみる。

グラフをみると、それなりに根拠がありそうなので、元ネタであるエネルギー庁の資料を見てみると・・・

総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 長期エネルギー需給見通し小委員会 発電コスト検証ワーキンググループ(第6回 平成27年4月27日(月)

当日の配布資料がダウンロードできるが、これの37ページ辺りから火力発電のコスト試算の説明がある。

疑問なのは、pp41-42の燃料費の考え方にあるLNG原油の燃料価格。為替が円安に進んでいる事実は考慮しているが、そもそもドルベースの燃料価格の平均値が昨年末来の原油価格を反映しきれていない。2014年時点の想定をするのであれば問題ないが、2030年までの推定をするのであれば1バレルあたり100ドル超の金額をベースに推定をするのは根拠としては弱い。今後の中東情勢を見てイランからの原油が市場に流れ込む事を考慮すると原油価格が大幅に上がる事は考えにくい。意図的に化石燃料の価格を高く見積もっているようにも取れる。これは原発推進には好都合の材料か。

ここで気になるのは、本当に原発の発電コストがそんなに安いのか?

この部分になると経産省の資料を読み込んでも、素人にはよく分からない。かと言って感覚的に断定をしてしまうと公平性に問題があるので、他に発表されている分かりやすいデータと照らし合わせてみる。

2012年の米DOE(エネルギー省)の発表によると、1000kw当たりの発電コストが、天然ガス63.1ドル、石炭94.8ドル、原子力113.9ドルとなっており、2035年までに建設される新規の発電所の3分の2は天然ガスとなる。

当然、経産省の試算方法にはCO2対策費用や運転費用が含まれているので、単純にDOEのデータとは比較は出来ないが、原発の運用コストは天然ガスより高く、中長期的に見て経済性が成り立たない。これを米国の天然ガス推進の思惑と取る事もできるが、実際にロシア他にも天然ガスもあるので、これはグローバルマーケットの総意とも取れる。

もうひとつの天然ガス資源が試算から漏れている事実

経産省としても2016年以降に始まる(筈?)の世界各地からのLNG出荷や、原油価格と連動したLNGの価格設定(=下落傾向)を加味しての試算であろうとは思うが、そもそも高コストであるLNGだけが発電燃料となる訳ではなくて、液化されていない天然ガスをパイプラインで利用シェールガスに代わる日本の切り札:JBPress)するという選択肢もあるわけで、仮にサハリンからのパイプラインが実現した場合はには、このコスト低減効果というものは2030年の試算に加味されるべきでは?

日本の発電の9割を支えているのは火力であり、その4割がLNGLNG天然ガスの流通総量の10%であり天然ガスの大半は液化されずに生ガスの状態でパイプラインによって流通されている。島国である日本が海外からパイプラインを引いてくる事は簡単ではないが、1990年代より開発が始まり2009年からLNGの出荷をしているサハリンからであれば極めて実現性が高い。ガス田と需要地の距離が4000km以内であれば、パイプラインの方がLNGよりコスト的に有利(液化設備等の投資のため)と言われているので、サハリンから首都圏の1400kmと考えると実に合理的。

リスクとメリット

エネルギーの安全保障に欠かせない地政学的リスクのアセスメント。まず考えられるのは、ウクライナ問題のようにパイプラインを政治的な交渉材料に使われるリスクは少ないらしい。パイプラインで結ばれた国家というのは運命共同体となり、簡単にお互いを裏切ることはできない相互の協力関係が生まれる。ウクライナ問題については単純にガス代金の未払いである側面が大きいので、現在のような政治的な局面に発展したのは東西の代理戦争とも言われている。

逆にメリットとしては、中東へのエネルギー依存からの脱却による地政学リスクヘッジ。イギリスでも一貫して供給地の分散を行い、地政学的なリスクをヘッジしてきた。これによって現在のイギリスの地位は築かれた

政治的な理由もあり、開発に時間が掛かっている案件ではあるが、サハリンからのパイプラインによる天然ガスの輸入が可能となれば北米・中東からのLNGへの依存度が下がり、地政学リスクのヘッジとともに、ジャパンプレミアムと言われる価格への交渉力が発揮できるはず。

参考リンク:

toyokeizai.net

newsphere.jp